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梅の花よそながら見む我妹子が
とがむばかりの香にもこそしめ

歌の意味
梅の花は離れたところから眺めよう。妻が見とがめるほどの香りが、衣に染みついてしまうと困るから。
鑑賞
巻第一 春歌上 27

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 梅の香が衣に染みつくと、妻にほかの女のもとへ行ったのかと疑われかねないので、梅は遠くから眺めようと詠んだ歌である。梅の香の強さを、妻の嫉妬という身近な心配事に結びつけたおかしみがある。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「梅の花」は、眺める対象を示す。
 二句「よそながら見む」の「よそながら」は離れたままで、の意で、「む」は意志を表す。ここで句切れとなる。
 三句「我妹子が」は、親しい女性、ここでは妻を示す。
 四句「とがむばかりの」は、見とがめるほどの、の意である。本巻の第三十一首の「人やとがめむ」と同じく、香をめぐって人にとがめられることを詠んでいる。
 結句「香にもこそしめ」の「もこそ」は、〜すると困る、という懸念を表し、已然形「しめ」と係り結びをなす。梅の香が衣に移るという趣向は、本巻の第十六首の「濃き香に我や衣染めてむ」とも響き合っている。

わぎもこ:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
とがむ:不審に思って問いただす
しむ:香りや色が染みつく
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
我が宿の梅の初花昼は雪 夜は月とも見えまがふかな
次の歌
梅の花折ればこぼれぬ我が袖に にほひ香移せ家づとにせん