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住吉の岸に生ひたる忘れ草
見ずやあらまし恋は死ぬとも

歌の意味
住吉の岸に生えている忘れ草を、見ないでおこうか。たとえ恋に死ぬとしても。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 888

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 恋を忘れさせるという住吉の岸の忘れ草を、たとえ恋に死ぬとしても見ないでおこうかと詠む歌である。恋の苦しみから逃れる手立てがあっても、恋を忘れるよりは苦しみを抱えたままでいたいという、恋への執着を詠んでいる。
 忘れ草は身につけると憂いを忘れるとされた草で、住吉の岸に生える草として古くから詠まれた。

 初句「住吉の」は、摂津国の住吉の、の意である。本巻の第八百六十九首の初句と同じ句である。
 二句「岸に生ひたる」は、岸に生えている、の意で、「たる」は存続の助動詞「たり」の連体形である。
 三句「忘れ草」は、身につけると憂いを忘れるとされた草で、萱草のことである。
 四句「見ずやあらまし」は、見ないでおこうか、の意で、「や」は疑問を、「まし」はためらいを表す助動詞である。ここで句切れとなる。
 結句「恋は死ぬとも」は、たとえ恋に死ぬとしても、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。四句と倒置になり、恋に死ぬことも辞さない覚悟を示している。

わすれぐさ:忘れ草。萱草。身につけると憂いを忘れるとされた
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
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