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谷寒みいまだ巣立たぬ鴬の
鳴く声若み人のすさめぬ

歌の意味
谷が寒いので、まだ巣立たない鴬の鳴く声が幼いために、人は心にとめてくれない。
鑑賞
巻第一 春歌上 34

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 谷が寒くてまだ巣立てない鴬の声は幼く、人に愛でてもらえないと詠んだ歌である。まだ一人前になれない鴬に、世に認められない身を重ねているとも読める。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
 なお本文の結句は「人のすさめぬ」とあり、読み仮名の行の「ひとのすさへぬ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「谷寒み」の「み」は原因や理由を表す接尾語で、谷が寒いので、の意である。
 二句「いまだ巣立たぬ」は、まだ巣から飛び立たない、の意で、幼い鴬のさまを表す。
 三句「鴬の」は、前歌の第三十三首を受けて、鴬の歌が続いている。前歌の鴬が雪の中でも家の庭で鳴いていたのに対し、本歌の鴬はまだ谷にこもっている。
 四句「鳴く声若み」の「み」も理由を表し、鳴く声が幼いので、の意である。初句と同じ語法を重ねて、調子を整えている。
 結句「人のすさめぬ」の「すさむ」は心にとめて愛でる意で、人が賞美してくれないことを表す。

すさむ:心にとめて愛でる、賞美する
すだつ:雛が巣から飛び立つ
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
かきくらし雪は降りつつしかすがに 我が家の園に鴬ぞ鳴く
次の歌
鴬の鳴きつる声に誘はれて 花のもとにぞ我は来にける