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深緑常盤の松の影にゐて
うつろふ花をよそにこそ見れ

歌の意味
深い緑の、いつまでも変わらない松の木陰にいて、色あせていく花をよそごととして眺めることだ。
鑑賞
巻第一 春歌上 42

詞書「松のもとにこれかれ侍りて花を見やりて」
 常に緑を保つ松の陰に身を置き、色あせ散っていく花を遠くに眺めた歌である。変わらない松と移ろう花を対比させ、松の側に立つことで、花の衰えを我が事とせず見る心を詠んでいる。
 詞書によれば、松の木のもとに何人かが集まり、花を遠く眺めて詠んだ歌である。次歌の第四十三首も同じ折の詠である。
 作者の坂上是則は坂上田村麻呂の子孫とされ、大和権少掾などを経て加賀介に至った。後撰和歌集の撰者坂上望城の父である。三十六歌仙の一人である。

 初句「深緑」は、松の濃い緑を示し、移ろう花の色と対比されている。
 二句「常盤の松の」の「常盤」は、永久に変わらないことを表す。
 三句「影にゐて」の「影」は陰の意で、松の木陰に身を置いていることを示す。
 四句「うつろふ花を」は、色あせて散りゆく花を示す。
 結句「よそにこそ見れ」の「こそ」は係助詞で、已然形「見れ」と係り結びをなす。花の衰えを我が身に関わりのないものとして眺めることを表す。次歌の第四十三首も花の色と松の緑を対比しており、二首は対をなしている。

ときは:永久に変わらないこと、常緑
うつろふ:色があせる、盛りが過ぎる
作者
坂上是則
出典
後撰和歌集
前の歌
妹が家のはひ入りに立てる青柳に 今や鳴くらん鴬の声
次の歌
花の色は散らぬ間ばかりふるさとに 常には松の緑なりけり