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花の色をうつしとどめよ鏡山
春より後の影や見ゆると

歌の意味
花の色を映しとどめておけ、鏡山よ。春が過ぎた後も、その姿が見えるかと思うので。
鑑賞
巻第一 春歌 73

詞書「亭子院歌合に」
 鏡山という名にちなんで、鏡のように花の色を映しとどめておいてほしい、春が過ぎた後もその姿を見られるかもしれないから、と山に呼びかける歌である。地名に込められた鏡の連想を生かし、去りゆく春を惜しむ心を表している。詞書によれば、亭子院歌合に出された歌である。
 作者の「坂上是則」は坂上田村麻呂の子孫で、平安時代前期の歌人である。三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「花の色を」は、とどめたいものとして花の色を示す。
 二句「うつしとどめよ」は、鏡に「映す」意と、花の色を「移す」意を掛けた掛詞で、命令形で山に呼びかける。二句切れである。
 三句「鏡山」は、近江国の歌枕で、その名から鏡を連想させる。
 四句「春より後の」は、春が過ぎた後の、の意である。
 結句「影や見ゆると」は、「影」が姿の意で、春が過ぎてもその姿が見えるかと、の意である。前歌の春の形見を願う心を受けている。

うつす:鏡に映す意と、色を移す意を掛ける
かがみやま:近江国の歌枕。現在の滋賀県竜王町と野洲市の境にある山
作者
坂上是則
出典
拾遺和歌集
前の歌
わが宿の八重山吹は一重だに 散り残らなん春の形見に
次の歌
春霞たち別れ行く山道は 花こそ幣と散りまがひけれ