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春霞たち別れ行く山道は
花こそ幣と散りまがひけれ

歌の意味
春霞が立つなか、別れて旅立って行く山道では、花こそが手向けの幣のように散り乱れていることだ。
鑑賞
巻第一 春歌 74

詞書「題しらず」
 春霞の立つなか、人と別れて山道を行くと、散る花がまるで旅の安全を祈る幣のように散り乱れていると詠む。別れの旅立ちと散る花を重ね、花が旅人を見送るかのように描いている。

 初句「春霞」は、本巻の第四十二首と同じく春霞で始まるが、ここでは晩春の霞となる。
 二句「たち別れ行く」は、霞が「立つ」意と、人と「立ち別れる」意を掛けた掛詞である。
 三句「山道は」は、旅の道としての山道を示す。
 四句「花こそ幣と」は、「こそ」の係助詞が置かれ、結句の已然形「けれ」で結ぶ。散る花を幣に見立てている。
 結句「散りまがひけれ」は、入り乱れて散ることだ、の意である。

たつ:霞が立つ意と、人が出立する意を掛ける
ぬさ:神に祈るときに捧げる、布や紙を細かく切ったもの。旅の安全を祈って道の神に手向けた
ちりまがふ:入り乱れて散る
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
花の色をうつしとどめよ鏡山 春より後の影や見ゆると
次の歌
年のうちはみな春ながら暮れななん 花見てだにも憂き世過ぐさん