- 歌の意味
- 我が家の八重山吹は、せめて一重だけでも散り残ってほしい。過ぎゆく春の形見として。
- 鑑賞
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巻第一 春歌 72
詞書「題しらず」
我が家の八重山吹が散っていくのを惜しみ、八重のうち一重だけでも散り残って、過ぎゆく春の形見となってほしいと願う歌である。八重と一重の数の対比に機知がある。
初句「わが宿の」は、本巻の第九首、第十五首と同じ初句である。
二句「八重山吹は」は、花びらの重なった八重咲きの山吹である。
三句「一重だに」は、「だに」が最小限の願望を表し、せめて一重だけでも、の意である。二句の「八重」と対をなす。
四句「散り残らなん」は、「なん」が他にあつらえ望む終助詞で、散り残ってほしい、の意である。
結句「春の形見に」は、過ぎゆく春をしのぶよすがとして、の意で、倒置によって願いの理由を示す。
かたみ:過ぎ去ったものや別れた人をしのぶよすがとなるもの
- 作者
- よみ人しらず
- 出典
- 拾遺和歌集
- 前の歌
- 沢水にかはづ鳴くなり山吹の うつろふ影や底に見ゆらん
- 次の歌
- 花の色をうつしとどめよ鏡山 春より後の影や見ゆると