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今はとてあきはてられし身なれども
霧立ち人をえやは忘るる

歌の意味
もうこれまでと、秋が果てるようにすっかり飽きられてしまった身ではあるが、霧が立つように立ち去ってゆくあの人を、どうして忘れることができようか。
鑑賞
巻第十八 雑歌四 1300

詞書「神無月のついたちごろ、妻のみそか男したりけるを見つけて、言ひなどしてつとめて」
 もうこれまでと飽きられた身ではあるが、霧の立つように去ってゆく人をどうして忘れられようか、と詠んだ歌である。秋の終わる神無月に、「秋果て」に「飽き果て」を掛け、妻の心変わりを知りながらも、その人を忘れられない思いを詠んでいる。
 詞書によれば、十月の初めごろ、妻がひそかに別の男と通じていたのを見つけて、言い争うなどした翌朝に詠んだ歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「今はとて」は、もうこれまでと、の意である。
 二句「あきはてられし」の「あき」は、「秋」と「飽き」を掛けた掛詞で、秋が果てる意と、すっかり飽きられた意を重ねている。詞書の「神無月のついたちごろ」は、秋が終わって冬に入る時節である。
 三句「身なれども」は、身ではあるが、の意で、「ども」は逆接を表す。
 四句「霧立ち人を」は、霧が立つように立ち去ってゆく人を、の意で、秋の景物の「霧」を「立ち」に重ねて詠んでいる。
 結句「えやは忘るる」は、どうして忘れることができようか、の意で、「え」は可能を表し、「やは」は反語の係助詞で、連体形「忘るる」で結ぶ係り結びとなっている。

あきはつ:「秋果つ」の意と、すっかり「飽き果つ」を掛ける
みそかをとこ:妻がひそかに通じる男
つとめて:翌朝
かみなづき:陰暦十月
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
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あしひきの山下とよみ鳴く鳥も 我がごと絶えず物思ふらめや
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思ひ出でて来つるもしるく紅葉葉の 色は昔に変はらざりけり