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思ひ出でて来つるもしるく紅葉葉の
色は昔に変はらざりけり

歌の意味
昔を思い出してやって来たかいがはっきりとあって、紅葉の色は昔と変わっていなかったことだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌四 1301

詞書「十月ばかり、おもしろかりし所なればとて、北山のほとりにこれかれ遊び侍りけるついでに」
 思い出して来たかいがあって、紅葉の色は昔と変わらなかった、と詠んだ歌である。かつて趣深かった北山を再び訪れ、紅葉が昔のままに色づいているのを見た喜びを詠んでいる。
 詞書によれば、十月ごろ、以前に趣深かった所だからといって、北山のあたりで人々が遊んだ折に詠んだ歌である。次歌は同じ折の坂上是則の歌で、二首は並べて置かれている。
 作者の「兼輔朝臣」は藤原兼輔である。藤原利基の子で、中納言に至った。賀茂川の堤に邸があったことから堤中納言と呼ばれ、紫式部の曽祖父にあたる。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「みかの原わきて流るるいづみ川」の歌が採られている。

 初句「思ひ出でて」は、昔を思い出して、の意である。
 二句「来つるもしるく」は、やって来たかいがはっきりとあって、の意である。
 三句「紅葉葉の」は、紅葉の、の意である。次歌の三句も「紅葉葉を」と同じ語を置いている。
 四句「色は昔に」は、色は昔と、の意である。
 結句「変はらざりけり」は、変わらなかったことだ、の意で、「けり」は気づきを表す。本巻の第千二百八十三首の結句「変はらざりけれ」と同じ言葉で、そちらは変わらぬ心、こちらは変わらぬ紅葉の色を詠んでいる。

きたやま:京の北方の山々
作者
藤原兼輔
出典
後撰和歌集
前の歌
今はとてあきはてられし身なれども 霧立ち人をえやは忘るる
次の歌
峰高み行きても見べき紅葉葉を 我がゐながらもかざしつるかな