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降る雪はかつも消ななむ梅の花
散るにまどはず折りてかざさむ

歌の意味
降る雪は降るそばから消えてほしい。散る梅の花と見まがうことなく、梅の枝を折って髪に挿そう。
鑑賞
巻第一 春歌上 45

詞書「かれこれ円居して酒らたうべける前に、梅の花に雪の降りかかりけるを」
 酒宴の席の前で、梅の花に雪が降りかかるのを見て、雪は降るそばから消えてほしい、そうすれば散る花と見まがわずに梅を折ってかざしにできると詠んだ歌である。雪と梅の白さが紛れる情景を、宴の興趣とともに描いている。
 詞書によれば、何人かが輪になって酒を飲んでいた前で、梅の花に雪が降りかかっていたのを見て詠んだ歌である。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守を務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。

 初句「降る雪は」は、梅の花に降りかかる雪を示す。雪と梅が見分けにくいという趣向は、本巻の第二十二首や第二十六首とも通じている。
 二句「かつも消ななむ」の「かつ」は、一方では、すぐに、の意で、「ななむ」は完了の「な」に願望の「なむ」がついたもので、消えてしまってほしい、の意である。ここで句切れとなる。
 三句「梅の花」は、雪の降りかかる梅を示し、宴の席に彩りを添えている。
 四句「散るにまどはず」の「まどふ」は、見まがう、区別がつかなくなる意である。降る雪を散る花と見まがうことなく、の意を表す。
 結句「折りてかざさむ」の「かざす」は花や枝を髪に挿す意で、「む」は意志を表す。宴の興に乗って梅をかざしにしようという晴れやかな気分を表している。

まとゐ:人々が輪になって集まること、団欒
かざす:花や枝を髪や冠に挿す
まどふ:見まがう、区別がつかなくなる
たうぶ:飲む、食べる
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
紅に色をば変へて梅の花 香ぞことごとににほはざりける
次の歌
春ごとに咲きまさるべき花なれば 今年をもまだ飽かずとぞ見る