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青柳の糸縒りはへて織る機を
いづれの山の鴬か着る

歌の意味
青柳の枝を糸として縒り、長く張り渡して織る機の布を、どこの山の鴬が着るのだろうか。
鑑賞
巻第二 春歌中 58

詞書「春の心を」
 風になびく青柳の細い枝を糸に見立て、それを縒って織り上げた布を、どこの山の鴬が着るのだろうかと思い描いた歌である。柳と鴬という春の景物を、機織りと衣の見立てで優美に結びつけている。
 詞書によれば、春の趣を題として詠んだ歌である。青柳の枝を糸に見立て、鴬をそれで作ったものをまとう鳥とする発想は、古今和歌集の神遊びの歌に見える、鴬が青柳の糸で梅の花笠を縫うという趣向とも通じている。
 作者の伊勢は伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた。宇多天皇の寵愛を受け、のちに敦慶親王との間に中務をもうけた。三十六歌仙の一人である。

 初句「青柳の」は、芽吹いたばかりの青々とした柳を示す。本巻の第六十七首も同じ「青柳の」で始まっている。
 二句「糸縒りはへて」は、柳の枝を糸として縒り、長く張り渡して、の意である。「糸」「縒り」「はへ」は機織りの縁語として結句まで連なっている。
 三句「織る機を」の「機」は機で織った布を指し、柳の枝を織物に見立てている。
 四句「いづれの山の」は、どこの山の、の意で、鴬の住む山を思いやっている。
 結句「鴬か着る」の「か」は疑問の係助詞で、連体形「着る」と係り結びをなす。柳の緑を鴬がまとう衣に見立てている。

よりはふ:糸を縒って長く張り渡す
はた:機織りの道具、また機で織った布
作者
伊勢
出典
後撰和歌集
前の歌
桜花主を忘れぬものならば 吹き来む風に言伝はせよ
次の歌
相思はでうつろふ色を見るものを 花に知られぬながめするかな