我が宿にすみれの花の多かれば
来宿る人やあると待つかな
- 歌の意味
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我が家にはすみれの花が多く咲いているので、訪ねて来て宿っていく人もあろうかと待っていることだ。
- 鑑賞
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巻第三 春歌下 89
詞書「荒れたる所に住み侍りける女、つれづれに思ほえ侍りければ、庭にあるすみれの花を摘みて言ひつかはしける」
荒れた家に住む女が、すみれの多く咲く我が家に、訪ねて来て宿る人もあるかと待っていると詠んだ歌である。摘んだすみれに添えて、相手の訪れをさりげなく誘っている。
詞書によれば、荒れた所に住んでいた女が、所在なく思われたので、庭に咲くすみれの花を摘んで言い送ったものである。すみれに心ひかれて野に一夜を明かしたという万葉集の山部赤人の歌が知られており、すみれの花のもとに人が宿るという発想はこれと通じている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
なお本文の三句は「おほかれは」とあり、読み仮名の行の「おほけれは」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「我が宿に」は、我が家に、の意で、詞書の荒れた住まいを示す。本巻の第九十三首、第百二十首も「我が宿の」で始まり、我が家を詠んでいる。
二句「すみれの花の」は、詞書で女が摘んだ庭のすみれを示す。
三句「多かれば」は、多く咲いているので、の意で、理由を示す。
四句「来宿る人や」の「来宿る」は、訪ねて来て宿る意である。「や」は疑問の係助詞で、結句の「ある」と係り結びをなす。
結句「あると待つかな」の「かな」は詠嘆で、そのような人もあろうかと待っていることよ、の意である。
きやどる:訪ねて来て宿る
つれづれ:することもなく所在ないこと
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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風をだに待ちてぞ花の散りなまし 心づからにうつろふが憂さ
- 次の歌
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山高み霞を分けて散る花を 雪とやよその人は見るらん