古典和歌stream

白雲と見えつるものを桜花
今日は散るとや色ことになる

歌の意味
これまで白雲と見えていたのに、桜の花は、今日は散るというので、色が変わって見えるのだろうか。
鑑賞
巻第三 春歌下 119

詞書「山桜を見て」
 これまで白雲と見えていた山桜が、今日は散るというので色が変わって見えるのだろうかと詠んだ歌である。白雲と見紛う盛りから散り際へと移る花のさまを、色の変化としてとらえている。
 詞書によれば、山桜を見て詠んだものである。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守などを務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。

 初句「白雲と」は、前の二首の白雲の見立てを受けている。本歌で、第百十七首から続く白雲の一連が結ばれる。
 二句「見えつるものを」の「つる」は完了、「ものを」は逆接で、白雲と見えていたのに、の意である。
 三句「桜花」は呼びかけで、山桜を示す。
 四句「今日は散るとや」の「や」は疑問の係助詞で、結句の連体形「なる」と係り結びをなす。
 結句「色ことになる」の「ことに」は、異なって、の意で、散り際の花の色が白雲とは違って見えることを表している。

やまざくら:山に咲く桜
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
山桜咲きぬる時は常よりも 峰の白雲立ちまさりけり
次の歌
我が宿の影とも頼む藤の花 立ち寄り来とも浪に折らるな