八重むぐら心の内に深ければ
花見に行かむ出で立ちもせず
- 歌の意味
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八重むぐらが生い茂るように、心の内に物思いが深く茂っているので、花見に行こうと出かける気にもならない。
- 鑑賞
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巻第三 春歌下 140
詞書は前の歌に続き「返し」
心の中に八重むぐらが深く茂っているので、花見に行こうと出かける気にもならないと返した歌である。荒れた家を覆う葎を心のふさぎにたとえ、ともに花を見られなかったわけを述べている。
第百三十七首と第百三十八首は藤原雅正が紀貫之に贈った歌で、第百三十九首と第百四十首はそれに対する貫之の返歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守などを務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「八重むぐら」は、幾重にも生い茂るつる草で、荒れた家を表す景物である。本巻の第八十九首の詞書にも「荒れたる所」が見える。
二句「心の内に」は、心の中に、の意で、葎が心の中に茂る、すなわち心がふさいでいることを表す。
三句「深ければ」は、深く茂っているので、の意で、理由を示す。
四句「花見に行かむ」は、前の第百三十八首の「花をも見めと」を受けている。本巻の第百十二首が花見に出で立つ心を詠んだのに対し、本歌は出で立つ気にもならない心を詠み、反対の構図をなしている。
結句「出で立ちもせず」は、出かける支度もしない、の意で、ふさいだ心を言い切っている。
やへむぐら:幾重にも生い茂るつる草
いでたつ:出かける、旅立つ
- 作者
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紀貫之
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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君にだに訪はれで経れば藤の花 たそかれ時も知らずぞありける
- 次の歌
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惜しめども春の限りの今日の又 夕暮れにさへなりにけるかな