今日よりは夏の衣に成りぬれど
着る人さへは変はらざりけり
- 歌の意味
-
今日からは夏の衣に替わったけれど、それを着る人までは変わらなかったことだ。
- 鑑賞
-
巻第四 夏歌 147
詞書「題しらず」
今日から夏の衣に着替えたけれど、それを着る人までは変わらなかったと詠んだ歌である。四月一日の衣更えによって装いは夏に改まっても、身の上や心は以前のままであるという感慨を表している。
夏歌の巻頭に置かれ、衣更えの日によって夏の始まりを告げている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「今日よりは」は、今日からは、の意で、四月一日の衣更えの日を示す。巻頭の歌として夏の始まりを告げ、巻末の第二百十六首が六月の晦日の禊を詠んで夏の終わりを告げるのと呼応している。
二句「夏の衣に」は、衣更えによって改めた夏の装束を示す。
三句「成りぬれど」の「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形、「ど」は逆接で、なったけれど、の意である。
四句「着る人さへは」の「さへ」は添加の副助詞で、衣を着る人までも、の意を表す。改まった衣と、変わらない着る人とを対比させている。
結句「変はらざりけり」の「ざり」は打消、「けり」は気づきの詠嘆で、変わらなかったのだなあ、と改めて気づいた感慨を表す。
ころもがへ:陰暦四月一日と十月一日に、季節に合わせて衣服を改めること
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
又も来む時ぞと思へど頼まれぬ 我が身にしあれば惜しき春かな
- 次の歌
-
卯の花の咲ける垣根の月清み 寝ねず聞けとや鳴くほととぎす