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憂き物と思ひ知りなば卯の花の
咲ける垣根も尋ねざらまし

歌の意味
憂くつらいものだと思い知ったなら、卯の花の咲いている垣根も、訪ねはしないだろうに。
鑑賞
巻第四 夏歌 152

詞書「返し」
 前歌で、つらいと思いながらも頼みにすると詠んだ相手に対し、本当につらいと思い知ったのなら卯の花の垣根を訪ねてはこないだろうと返した歌である。憂いと言いながら通ってくるのは、本心ではないのだろうと切り返している。
 前歌の第百五十一首と贈答をなす。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「憂き物と」は、前歌の「うし」を受け、つらいものだと、の意である。卯の花の「う」の音を響かせている。
 二句「思ひ知りなば」の「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ば」は仮定を表し、思い知ったならば、の意である。結句の「まし」と呼応する反実仮想の構文である。
 三句「卯の花の」は、前歌の三句「卯の花は」と同じ位置に置かれ、贈答の形を整えている。
 四句「咲ける垣根も」は、卯の花の咲いている垣根も、の意で、前歌の「君が垣根」を受けている。本巻の第百四十八首の二句「咲ける垣根の」とも同じ語を共有している。
 結句「尋ねざらまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、訪ねはしないだろうに、の意である。訪ねてくるのは本当にはつらく思っていないからだと、相手の言葉を逆手に取っている。

たづぬ:訪ねる、訪れる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
恨めしき君が垣根の卯の花は うしと見つつもなほ頼むかな
次の歌
時分かず降れる雪かと見るまでに 垣根もたわに咲ける卯の花