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夏草の茂みに生ふるまろこすげ
まろがまろ寝よ幾夜経ぬらん

歌の意味
夏草の茂みに生える丸小菅ではないが、私が衣も脱がずに独りで寝るまろ寝よ。いったい幾夜を過ごしたことだろう。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 829

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 夏草の茂みに生えるまろこすげの名のように、私が衣のまま独りで寝るまろ寝を、幾夜過ごしたことだろうと嘆く歌である。「まろ」の音を三度重ねる言葉遊びの中に、訪れのない恋人を待って独り寝を重ねるわびしさを詠んでいる。

 初句「夏草の」は、夏草の、の意である。前の第八百二十七首と第八百二十八首に続き、夏の茂みを詠んでいる。
 二句「茂みに生ふる」は、茂みに生える、の意である。
 三句「まろこすげ」は、丸小菅で、初句からここまでが、同じ音を重ねて四句の「まろ」を導く序詞となる。
 四句「まろがまろ寝よ」は、私が衣のまま独りで寝ることよ、の意である。「まろ」は自分を指す語で、三句の「まろこすげ」と「まろ寝」と、「まろ」の音を三度重ねている。
 結句「幾夜経ぬらん」は、幾夜を過ごしたことだろうか、の意で、「らん」は現在推量を表す。巻頭の第七百七十七首や第七百七十八首の独り寝を受け、独り寝の夜の数を詠んでいる。

まろこすげ:丸小菅。カヤツリグサ科の草
まろ:麿。自分を指す語
まろね:丸寝。衣を着たまま独りで寝ること
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
野も山も茂りあひぬる夏なれど 人のつらさは言の葉もなし
次の歌
山がつの垣ほに生ふるなでしこに 思ひよそへぬ時の間ぞなき