あひ見しもまだ見ぬ恋も郭公
月に鳴く夜ぞ世に似ざりける
- 歌の意味
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逢ったことのある恋も、まだ逢ったことのない恋も、ほととぎすが月の下で鳴く夜こそは、ほかにたとえようもないほど切ないものであった。
- 鑑賞
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巻第四 夏歌 157
詞書「卯月ばかりの月おもしろかりける夜、人につかはしける」
逢ったことのある恋も、まだ逢わない恋も、ほととぎすが月に鳴く夜には比べるものがないほど身にしみると詠んだ歌である。月夜のほととぎすの声が、どのような恋心をもかき立てることを表している。
詞書によれば、四月ごろの月が趣深かった夜、ある人に贈ったものである。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「あひ見しも」は、逢ったことのある恋も、の意で、「あひ見る」は男女が逢って契ることをいう。
二句「まだ見ぬ恋も」は、まだ逢ったことのない恋も、の意で、初句と対をなし、あらゆる恋を包んでいる。
三句「郭公」は、月夜に鳴く鳥として、恋心をかき立てるものとして置かれている。
四句「月に鳴く夜ぞ」は、月の下で鳴く夜こそは、の意で、「ぞ」は強意の係助詞である。詞書の月のおもしろい夜に応じている。
結句「世に似ざりける」は、世にたとえるものがない、の意で、連体形「ける」が四句の「ぞ」と係り結びをなす。四句の「夜」と結句の「世」は同じ音を重ねている。
あひみる:男女が逢って契りを交わす
よににず:世に比べるものがない、ほかに類がない
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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鳴きわびぬいづちか行かん郭公 なほ卯の花の影は離れじ
- 次の歌
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有りとのみおとはの山の郭公 聞きに聞こえて逢はずもあるかな