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ほととぎす来ては旅とや鳴き渡る
我は別れの惜しき都を

歌の意味
ほととぎすは、ここへ来ては旅だとばかりに鳴き渡っていくのだろうか。私は別れるのが惜しい都であるのに。
鑑賞
巻第四 夏歌 176

詞書「四五月ばかり、遠き国へまかり下らむとする頃、郭公を聞きて」
 ほととぎすは都に来ても旅だとばかりに鳴いて飛んでいくのか、自分は別れがたい都であるのにと詠んだ歌である。山から都へ来て鳴き渡るほととぎすと、都を離れて遠国へ下る自身とを対比させ、別れの惜しさを表している。
 詞書によれば、四、五月ごろ、遠い国へ下ろうとしていた時に、ほととぎすの声を聞いて詠んだものである。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「ほととぎす」は、山から都へ来て鳴く鳥として置かれている。
 二句「来ては旅とや」は、都へ来ても旅だというのか、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
 三句「鳴き渡る」は、鳴きながら飛んでいく、の意で、連体形で二句の「や」と係り結びをなす。ここで句切れとなる。
 四句「我は別れの」は、私は別れの、の意で、ほととぎすと自分とを対比させている。
 結句「惜しき都を」は、惜しい都であるのに、の意で、「を」は逆接と詠嘆を兼ねる。ほととぎすには旅の通り道にすぎない都が、自分にとっては別れがたい所であることを表している。

まかりくだる:都から地方へ下る
なきわたる:鳴きながら飛んでいく
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
折りはへて音をのみぞ鳴く郭公 しげきなげきの枝ごとにゐて
次の歌
独りゐて物思ふ我を郭公 ここにしも鳴く心あるらし