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玉匣あけつるほどの郭公
ただ二声も鳴きて来しかな

歌の意味
夜が明けたころのほととぎすは、ほんの二声ほど鳴いてやって来たことだ。
鑑賞
巻第四 夏歌 178

詞書「題しらず」
 夜が明けるころのほととぎすが、ほんの二声ほど鳴いてやって来たと詠んだ歌である。明け方のわずかな声を、名残惜しく貴重なものとして受けとめている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「玉匣」は、美しい櫛箱の意で、箱を「開く」ことから「あく」にかかる枕詞である。
 二句「あけつるほどの」の「あけ」は、枕詞を受けて箱を「開け」る意と、夜が「明け」る意を掛けた掛詞である。「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形で、夜が明けたころの、の意である。
 三句「郭公」は、明け方に鳴く鳥として置かれている。
 四句「ただ二声も」は、ほんの二声ほど、の意で、声のわずかさを表している。本巻の第百七十二首の「二声と」と同じく、わずかな声を惜しむ趣向である。
 結句「鳴きて来しかな」は、鳴いてやって来たことだ、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「かな」は詠嘆を表す。

あく:櫛箱を「開く」意と、夜が「明く」意を掛ける
たまくしげ:美しい櫛箱、また「あく」「ふた」などにかかる枕詞
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
独りゐて物思ふ我を郭公 ここにしも鳴く心あるらし
次の歌
数ならぬわがみ山辺の郭公 木の葉隠れの声は聞こゆや