郭公はつかなる音を聞きそめて
あらぬもそれとおぼめかれつつ
- 歌の意味
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ほととぎすのかすかな声を聞きはじめてから、そうではない声までも、それかと思い迷われてばかりいる。
- 鑑賞
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巻第四 夏歌 189
詞書「女の物見にまかり出でたりけるに、異車傍らに来たりけるに、物など言ひかはして後につかはしける」
ほととぎすのかすかな声を聞いてからというもの、違う声までもそれかと迷ってしまうと詠んだ歌である。物見の折にわずかに言葉を交わした相手を、かすかに鳴くほととぎすになぞらえ、その声が忘れられない心を伝えている。
詞書によれば、物見に出かけた折、ほかの車がそばに来て、言葉などを交わしたのちに贈ったものである。
作者の伊勢は伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた。宇多天皇の寵愛を受け、のちに敦慶親王との間に中務をもうけた。三十六歌仙の一人である。
初句「郭公」は、物見の折にわずかに言葉を交わした相手をなぞらえている。
二句「はつかなる音を」は、かすかな声を、の意で、わずかに交わした言葉を表している。
三句「聞きそめて」は、聞きはじめて、の意で、「そむ」は〜しはじめる意を表す。
四句「あらぬもそれと」は、そうではない声までもそれかと、の意で、ほかの声を聞いても相手の声かと思うさまを表す。
結句「おぼめかれつつ」の「おぼめく」は、はっきりせず迷う意で、「れ」は自発、「つつ」は反復を表す。思い迷われてばかりいる、の意である。
はつか:わずか、かすか
おぼめく:はっきりせず迷う、いぶかる
ことぐるま:ほかの人の牛車
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
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夏の夜に恋しき人の香をとめば 花橘ぞしるべなりける
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五月雨の続ける年のながめには 物思ひあへる我ぞわびしき