古典和歌stream

空蝉の声聞くからに物ぞ思ふ
我も空しき世にし住まへば

歌の意味
蝉の声を聞くとすぐに、もの思いがわいてくる。私もまた、むなしいこの世に住み続けているので。
鑑賞
巻第四 夏歌 195

詞書「題しらず」
 蝉の声を聞くとすぐにもの思いにとらわれる、自分もまたむなしい世に住んでいるからだと詠んだ歌である。抜け殻を意味する「空蝉」と「空しき世」とを響き合わせ、蝉のはかなさに我が身の無常を重ねている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「空蝉の」は、蝉、またその抜け殻をいい、本巻の第百九十二首の三句と同じ語である。
 二句「声聞くからに」の「からに」は、〜するとすぐに、の意で、声を聞くやいなや、の意である。
 三句「物ぞ思ふ」は、もの思いをする、の意で、「ぞ」は係助詞、連体形「思ふ」と係り結びをなす。ここで句切れとなり、下の句と倒置になっている。
 四句「我も空しき」は、私もまたむなしい、の意で、初句の「空蝉」と同じ「空」の字を重ね、蝉と自分とを結びつけている。
 結句「世にし住まへば」の「し」は強意の副助詞、「住まへ」は住み続ける意の「住まふ」の已然形で、「ば」は確定条件を表す。この世に住み続けているので、の意である。

うつせみ:蝉、また蝉の抜け殻、転じてむなしいもの
すまふ:住み続ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
八重葎茂き宿には夏虫の 声より外に訪ふ人もなし
次の歌
如何せむをぐらの山の郭公 おぼつかなしと音をのみぞ鳴く