なでしこはいづれともなくにほへども
後れて咲くはあはれなりけり
- 歌の意味
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撫子の花はどれということもなく美しく咲き匂っているが、遅れて咲いたものは、ことにいとおしく思われることだ。
- 鑑賞
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巻第四 夏歌 203
詞書「師尹朝臣のまだ童にて侍りける、常夏の花を折りて持ちて侍りければ、この花につけて内侍の督の方に送り侍りける」
撫子はどれも美しく咲いているが、遅れて咲いたものはことにいとおしいと詠んだ歌である。撫子に「撫でし子」を重ね、子らはみな愛しいが、遅く生まれた末の子はとりわけいとおしいという親の情を表している。
詞書によれば、子の師尹がまだ幼かったころ、常夏の花を折って持っていたので、その花に付けて尚侍のもとへ贈ったものである。遅れて咲く撫子に、年少の師尹をなぞらえている。
作者の「太政大臣」は藤原忠平である。藤原基経の四男で、左大臣、太政大臣を経て摂政、関白となった。諡を貞信公という。師尹の父で、紀貫之らの歌人を庇護した。
初句「なでしこは」の「なでしこ」は、花の「撫子」と、かわいがって撫でた子の意の「撫でし子」を掛けた掛詞で、我が子らをなぞらえている。前歌の第二百二首の「山となでしこ」に続き、撫子を詠んでいる。
二句「いづれともなく」は、どれということもなく、の意で、子らがみな愛しいことを表している。
三句「にほへども」の「にほふ」は花が美しく照り映える意で、「ども」は逆接を表す。
四句「後れて咲くは」は、遅れて咲いたものは、の意で、遅く生まれた師尹を指している。
結句「あはれなりけり」は、しみじみといとおしいことだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。
なでしこ:花の「撫子」と、撫でてかわいがった子の意の「撫でし子」を掛ける
ないしのかみ:内侍司の長官、尚侍
わらは:元服前の子ども
- 作者
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藤原忠平
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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色と言へば濃きも薄きも頼まれず 山となでしこ散る世なしやは
- 次の歌
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撫子の花散りがたになりにけり わが待つ秋ぞ近くなるらし