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君がため祝ふ心の深ければ
聖の御代のあとならへとぞ

歌の意味
あなたのために祝う心が深いので、聖天子の御代の跡を、この手本の筆跡とともに学んでほしいと思うのである。
鑑賞
巻第二十 慶賀歌 1378

詞書「今上、帥の親王と聞こえし時、太政大臣の家に渡りおはしまして、帰らせたまふ御贈り物に、御本奉るとて」
 あなたのために祝う心が深いので、聖の御代の跡を学んでほしい、と詠んだ歌である。のちに即位する親王に手本を献上し、その筆跡を習うとともに、聖天子の治世の跡を手本としてほしいと、将来への祝いと期待を込めている。
 詞書によれば、今上の村上天皇がまだ大宰帥の親王であった時、太政大臣の家にお出ましになり、お帰りになる際の贈り物として手本を献上するにあたって詠んだ歌である。次歌は天皇の返しで、二首は贈答の一組となっている。
 作者の「太政大臣」は藤原忠平である。藤原基経の四男で、摂政、関白、太政大臣を歴任し、貞信公と諡された。小倉百人一首には「小倉山峰のもみぢ葉心あらば」の歌が採られている。

 初句「君がため」は、あなたのために、の意で、親王を指している。本巻の第千三百七十五首と同じ初句である。
 二句「祝ふ心の」は、祝う心が、の意である。
 三句「深ければ」は、深いので、の意で、「ば」は原因、理由を表す。
 四句「聖の御代の」は、聖天子の治世の、の意で、理想とされる古の聖代をいう。
 結句「あとならへとぞ」の「あと」は、手本の「筆跡」と、聖代の「事績」を掛けた掛詞である。「ぞ」の下に「思ふ」などが略されている。次歌の結句「あとはまどはじ」に受けられている。

そちのみこ:大宰帥に任じられた親王
おほんほん:手習いの手本
あと:手本の「筆跡」の意と、聖代の「事績」の意を掛ける
ならふ:学ぶ、見習う
作者
藤原忠平
出典
後撰和歌集
前の歌
脇息をおさへてまさへ万代に 花の盛りを心静かに
次の歌
教へおくこと違はずは行く末の 道遠くともあとはまどはじ