花も散り郭公さへいぬるまで
君にもゆかずなりにけるかな
- 歌の意味
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花も散り、ほととぎすまでも去ってしまうまで、あなたのもとにも行かずじまいになってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第四 夏歌 211
詞書「月ごろ患ふことありて、まかり歩きもせで、まで来ぬよし言ひて文の奥に」
花も散り、ほととぎすまで去ってしまうまで、あなたのもとへも行かずじまいになったと詠んだ歌である。春から夏の終わりまで訪ねられなかった月日の長さを、季節の景物の移り変わりで表している。
詞書によれば、数か月病気をして出歩くこともできず、参上できなかった事情を書いた手紙の終わりに添えたものである。次歌は藤原雅正の返歌で、二首は贈答をなしている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守などを務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「花も散り」は、春の花も散り、の意で、春が過ぎたことを示している。
二句「郭公さへ」の「さへ」は添加の副助詞で、夏の鳥であるほととぎすまでも、の意である。
三句「いぬるまで」は、去ってしまうまで、の意で、夏も終わりに近いことを示す。本巻の第二百八首がほととぎすの声の遠のきを詠んだのを受けている。
四句「君にもゆかず」は、あなたのもとにも行かないで、の意である。
結句「なりにけるかな」は、なってしまったことだ、の意で、「に」は完了、「ける」は詠嘆、「かな」は詠嘆を表す。次歌の第二百十二首は「花鳥の」と受け、花と鳥の両方を詠み込んで応じている。
いぬ:去る、行ってしまう
まかりありく:出歩く
まうでく:参上する、うかがう
- 作者
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紀貫之
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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天の河水まさるらし夏の夜は 流るる月の淀む間もなし
- 次の歌
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花鳥の色をも音をもいたづらに 物憂かる身は過ぐすのみなり