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逢ひ見てもなほ慰まぬ心かな
幾千夜寝てか恋の覚むべき

歌の意味
逢ってもやはり慰まない心であることよ。幾千夜共に寝たならば、この恋は覚めるのだろうか。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 716

詞書は前の歌に続き「はじめて女のもとにまかりて、あしたにつかはしける」
 逢ってもなお慰まない心であることよ、いったい幾千夜共に寝たらこの恋は覚めるのだろうかと詠む歌である。詞書は前の二首と同じで、初めて女のもとを訪ねた翌朝に贈った後朝の歌である。眠りから覚めるように恋から覚めることを思いつつ、いくら共寝を重ねても恋しさは尽きないだろうと、恋の深さを表している。第七百十首から続いた、逢った後にもかえって恋しさが募ると詠む一連を結んでいる。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。

 初句「逢ひ見ても」は、逢っても、の意で、第七百十二首の初句「逢ひ見ても」と同じ句である。
 二句「なほ慰まぬ」は、やはり慰まない、の意で、第七百十三首の二句と三句「なほ逢ひ見ても慰まず」と同じ語を用いている。
 三句「心かな」は、心であることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「幾千夜寝てか」は、幾千夜共寝をしたならば、の意で、係助詞「か」は結句の連体形「べき」で結ぶ係り結びである。
 結句「恋の覚むべき」は、恋が覚めるのだろうか、の意で、四句の「寝て」に対して「覚む」と応じている。

さむ:覚む。目が覚める、心が冷める
作者
紀貫之
出典
拾遺和歌集
前の歌
暁のなからましかば白露の おきてわびしき別れせましや
次の歌
むばたまの今夜な明けそ明けゆかば 朝行く君を待つ苦しきに