むばたまの今夜な明けそ明けゆかば
朝行く君を待つ苦しきに
- 歌の意味
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今夜よ、明けないでおくれ。夜が明けていったなら、朝に帰って行くあなたを、また待つことになるのがつらいのだから。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 717
今夜は明けないでほしい、明ければ朝に帰って行くあなたを再び待つのがつらいからと詠む歌である。女の立場から、夜明けとともに去る男を思い、次に逢う夜まで待つことになるつらさを訴えている。万葉集にも、ほぼ同じ趣の歌が見える。
作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
初句「むばたまの」は、「夜」にかかる枕詞で、ここでは二句の「今夜」にかかる。「ぬばたまの」の変化した形である。
二句「今夜な明けそ」は、今夜は明けないでくれ、の意で、「な〜そ」は禁止を表す。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
三句「明けゆかば」は、明けていったならば、の意で、二句の「明け」を重ねている。本巻の第七百十九首の四句「明けゆくほどは」と、夜が明けていくことを嘆く心を共有している。
四句「朝行く君を」は、朝に帰って行くあなたを、の意である。
結句「待つ苦しきに」は、待つのがつらいのだから、の意で、倒置して二句の願いの理由を示している。
むばたまの:「夜」「黒」などにかかる枕詞
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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逢ひ見てもなほ慰まぬ心かな 幾千夜寝てか恋の覚むべき
- 次の歌
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独り寝し時は待たれし鳥の音も まれに逢ふ夜はわびしかりけり