夏虫の身を焚き捨てて玉しあらば
我とまねばむ人目守る身ぞ
- 歌の意味
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夏虫が身を焼き捨てるように、もし魂だけでも残るのならば、私も自ら進んでそれをまねよう。人目をはばかってばかりいるこの身であるよ。
- 鑑賞
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巻第四 夏歌 213
詞書「題しらず」
夏虫が火に飛び込んで身を焼き捨てるように、魂だけでも残るのなら自分もそれをまねようと詠んだ歌である。人目をはばかって思いを遂げられない身を嘆き、身を捨ててでも恋に殉じたいという激しい思いを表している。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「夏虫の」は、火に飛び込んで身を焼く夏の虫を示している。本巻の第二百九首も「夏虫の」を三句に置き、身よりあまる思いを詠んでいる。
二句「身を焚き捨てて」は、身を焼き捨てて、の意で、火に飛び込む虫のさまを表している。
三句「玉しあらば」の「玉」は魂のことで、「し」は強意の副助詞、「ば」は仮定を表す。魂だけでも残るならば、の意である。
四句「我とまねばむ」は、自分から進んでまねよう、の意で、「む」は意志を表す。
結句「人目守る身ぞ」は、人目をうかがってばかりいる身であるよ、の意で、「ぞ」は文末で強く言い切る終助詞の働きをしている。
たま:魂
まねぶ:まねる、そのとおりにする
ひとめもる:人目をうかがう、人目をはばかる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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花鳥の色をも音をもいたづらに 物憂かる身は過ぐすのみなり
- 次の歌
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今宵かくながむる袖の露けきは 月の霜をや秋と見つらん