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秋萩を色どる風の吹きぬれば
人の心も疑はれけり

歌の意味
秋萩を色づかせる風が吹いたので、あなたの心も変わるのではないかと疑われることだ。
鑑賞
巻第五 秋歌上 223

詞書「女のもとより、文月ばかりに言ひおこせて侍りける」
 秋萩を色づかせる風が吹いたので、あなたの心も色変わりするのではないかと疑われると詠んだ歌である。萩の葉が秋風に色を変えるように、相手の心も移ろうのではないかという不安を表している。
 詞書によれば、七月ごろに女のもとから言い送ってきたものである。次歌は在原業平の返歌で、二首は贈答をなしている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。詞書から女の歌であることがわかる。

 初句「秋萩を」は、秋に花を咲かせる萩を、の意である。次歌の第二百二十四首も同じ初句で受けている。
 二句「色どる風の」は、色づかせる風が、の意で、秋風が草木の色を変えるという考え方を踏まえている。本巻の第二百六十三首も「草葉色どる」と、草葉の色づきを詠んでいる。
 三句「吹きぬれば」は、吹いたので、の意で、「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形、「ば」は順接の確定条件を表す。
 四句「人の心も」は、あなたの心も、の意で、色を変える萩に、相手の心変わりを重ねている。
 結句「疑はれけり」の「れ」は自発の助動詞「る」の連用形で、自然と疑われてしまうことだ、の意である。

いろどる:色をつける、色づかせる
ふみづき:陰暦七月の異称、秋の初めの月
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
露分けし袂干す間もなきものを など秋風のまだき吹くらん
次の歌
秋萩を色どる風は吹きぬとも 心はかれじ草葉ならねば