天の河渡らむ空もおもほえず
絶えぬ別れと思ふものから
- 歌の意味
-
天の川を渡ろうという気持ちにもなれない。いつまでも絶えることのない別れだと思うので。
- 鑑賞
-
巻第五 秋歌上 226
詞書「題しらず」
逢えばまた別れが来て、その別れは毎年絶えることなく繰り返されると思うので、天の川を渡ろうという気持ちにもなれないと詠んだ歌である。逢瀬の喜びよりも、その後に来る別れのつらさを先に思う心を、織女になぞらえて表している。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみひとも」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「天の河」は、織女と彦星を隔てる天の川を示す。本巻ではこのあと、天の川を初句に置く七夕の歌が数多く並んでいる。
二句「渡らむ空も」の「む」は意志の助動詞、「空」は、心地、気持ち、の意で、渡ろうという気持ちも、の意である。天の川の空の景も思わせている。
三句「おもほえず」は、思われない、の意で、ここで句切れとなる。
四句「絶えぬ別れと」は、絶えることのない別れだと、の意で、毎年必ず訪れる別れを表している。
結句「思ふものから」の「ものから」は接続助詞で、ここでは、思うので、の意を表す。上の句と倒置の関係にあり、渡る気になれない理由を後から示している。本巻の第二百五十首も同じ結句「思ふものから」を置いている。
そら:心地、気持ち
おもほゆ:自然に思われる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
あふことはたなばたつめに等しくて 裁ち縫ふわざはあへずぞありける
- 次の歌
-
雨降りて水まさりけり天の河 今宵はよそに恋ひむとや見し