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水まさり浅き瀬知らずなりぬとも
天の門渡る舟もなしやは

歌の意味
水かさが増して浅瀬がわからなくなったとしても、天の門を渡る舟もないというのだろうか、あるはずだ。
鑑賞
巻第五 秋歌上 228

詞書「返し」
 水かさが増して浅瀬がわからなくなったとしても、天の川を渡る舟がないということがあろうか、来る気があれば来られたはずだと返した歌である。雨を言い訳にした男を、舟で渡ればよいとやり返している。
 前歌の第二百二十七首と贈答をなす。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。前歌の作者が通っていた女と考えられる。

 初句「水まさり」は、水かさが増して、の意で、前歌の「水まさりけり」を受けている。
 二句「浅き瀬知らず」は、浅瀬がわからず、の意で、歩いて渡れる所が見えないことを表す。
 三句「なりぬとも」の「とも」は逆接の仮定条件で、なったとしても、の意である。
 四句「天の門渡る」は、天の門を渡る、の意で、「天の門」は天の川の渡り口を示す。本巻の第二百三十八首も「天の門渡る」を置いている。
 結句「舟もなしやは」の「やは」は反語で、舟もないというのか、いやあるはずだ、の意である。浅瀬がなければ舟で来ればよいと、前歌の言い訳を切り返している。

あまのと:天の川の渡り口、天の門
せ:川の浅く流れの速い所、浅瀬
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
雨降りて水まさりけり天の河 今宵はよそに恋ひむとや見し
次の歌
織女も逢ふ夜ありけり天の河 この渡りには渡る瀬もなし