彦星のまれに逢ふ夜のとこ夏は
打ち払へども露けかりけり
- 歌の意味
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彦星がまれに逢う夜の床は、常夏の花のように、払っても払っても露に濡れていることだ。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌上 230
詞書「離れにける男の、七日の夜まで来たりければ、女の詠みて侍りける」
まれに訪れた男を彦星になぞらえ、まれに逢う夜の床は、払っても払っても涙の露に濡れていると詠んだ歌である。久しぶりの訪れを喜ぶよりも、通いの途絶えていた間の涙を訴えている。
詞書によれば、通わなくなっていた男が七月七日の夜にやって来たので、女が詠んだものである。古今和歌集の凡河内躬恒の「塵をだにすゑじとぞ思ふ咲きしより妹と我が寝るとこなつの花」も、常夏の花に床を重ねている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。詞書から女の歌であることがわかる。
初句「彦星の」は、牽牛星の、の意で、たまにしか訪れない男をなぞらえている。
二句「まれに逢ふ夜の」は、まれに逢う夜の、の意で、七夕の年に一度の逢瀬と、男の久しぶりの訪れとを重ねている。
三句「とこ夏は」の「とこ夏」は、撫子の別名である「常夏」と、寝床の「床」を掛けた掛詞である。
四句「打ち払へども」の「打ち」は接頭語、「ども」は逆接の確定条件で、払っても、の意である。床の塵を払う動作を示している。
結句「露けかりけり」は、露に濡れていることだ、の意で、露には涙が重ねられている。「露」は「常夏」の花の縁語である。
とこなつ:撫子の別名「常夏」と、寝床の「床」を掛ける
かる:疎遠になる、通わなくなる
ひこぼし:牽牛星、七夕に織女と逢う男星
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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織女も逢ふ夜ありけり天の河 この渡りには渡る瀬もなし
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恋ひ恋ひて逢はむと思ふ夕暮れは たなばたつめもかくぞあるらし