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音に聞く人に心をつくばねの
みねど恋しき君にもあるかな

歌の意味
噂に聞くだけの人に心を尽くして、筑波嶺の峰ではないが、まだ見ないのに恋しいあなたであることよ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 627

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 噂に聞くだけの人に心を尽くし、筑波嶺の峰ではないが、見ないのに恋しいあなたであることよ、と詠む歌である。「つくばね」に心を「尽く」す意を、「みね」に「峰」と「見ね」を掛け、まだ会ったことのない人を噂だけで恋い慕う見ぬ恋を詠んでいる。次歌の第六百二十八首の「音にのみやは」と同じく「音」の語を用い、噂でしか知らない恋の歌が続いている。

 初句「音に聞く」は、噂に聞く、の意で、次歌の第六百二十八首の四句「音にのみやは」、第六百四十一首の初句「音にのみ」と、噂に聞くだけの恋を詠む点で共通している。
 二句「人に心を」は、その人に心を、の意である。
 三句「つくばねの」は、「つく」が心を「尽く」す意と、常陸国の歌枕「筑波嶺」を掛ける掛詞である。
 四句「みねど恋しき」は、「みね」が筑波嶺の「峰」と「見ね」を掛ける掛詞で、見ないけれど恋しい、の意を表す。三句の「つくばねの」が同音の「みね」を導いている。
 結句「君にもあるかな」は、あなたであることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。

つくばね:心を「尽く」す意と、常陸国の歌枕「筑波嶺」を掛ける
みね:筑波嶺の「峰」と、見ない意の「見ね」を掛ける
おと:音。うわさ、評判
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
逢ふことをまつにて年の経ぬるかな 身は住の江に生ひぬものゆゑ
次の歌
天雲の八重雲隠れ鳴る神の 音にのみやは聞きわたるべき