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いづ方にことづてやりて雁がねの
逢ふことまれに今はなるらん

歌の意味
いったいどちらへ便りを託して送ったために、年に一度渡ってくる雁のように、今はまれにしか逢えなくなってしまったのだろう。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 980

詞書「朝綱朝臣の女に文など遣はしけるを、異女に言ひつきて久しうなりて、秋とぶらひて侍りければ」
 どちらへ便りを託して送ったから、雁のように逢うことがまれになったのだろう、と詠んだ歌である。便りを運ぶという雁にこと寄せ、ほかの女に便りを送るようになって自分のもとへの訪れがまれになったことを、皮肉を込めて責めている。
 詞書によれば、朝綱朝臣の娘に手紙などを送っていた男が、別の女に言い寄って久しく訪れず、秋になって訪ねてきたので、娘が詠んだ歌である。朝綱朝臣は大江朝綱とみられる。秋に飛来する雁は、秋に訪ねてきた男と重なっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「いづ方に」は、どちらへ、の意である。
 二句「ことづてやりて」は、便りを託して送って、の意である。
 三句「雁がねの」は、雁の、の意で、便りを運ぶ鳥とされ、また年に一度秋に渡ってくることから四句の「まれ」を導いている。
 四句「逢ふことまれに」は、逢うことがまれに、の意である。
 結句「今はなるらん」は、今はなっているのだろう、の意で、「らん」は現在の原因を推量する助動詞「らむ」である。

ことづて:人に託して伝える言葉、便り
かりがね:雁、またその鳴き声
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
駒にこそまかせたりけれあやなくも 心の来ると思ひけるかな
次の歌
ありとだに聞くべきものを逢坂の 関のあなたぞはるけかりける