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恋ひ恋ひて逢はむと思ふ夕暮れは
たなばたつめもかくぞあるらし

歌の意味
恋しく思い続けて、やっと逢おうと思う夕暮れは、織女もきっとこのようであるらしい。
鑑賞
巻第五 秋歌上 231

詞書「七日、人のもとより返り事に、今宵逢はんと言ひおこせて侍りければ」
 恋い続けた末にやっと逢おうとする夕暮れの心は、年に一度の逢瀬を待つ織女もこうなのだろうと詠んだ歌である。逢瀬を前にした高ぶる思いを、七夕の織女に重ねている。
 詞書によれば、七月七日に、相手から今夜逢おうという返事を送ってきたので詠んだものである。次歌は相手の返歌で、二首は贈答をなしている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「恋ひ恋ひて」は、恋しく思い続けて、の意で、同じ語を重ねて思いの深さを表している。
 二句「逢はむと思ふ」の「む」は意志の助動詞で、逢おうと思う、の意である。
 三句「夕暮れは」は、夕暮れは、の意で、逢瀬の時を待つ時刻を示す。
 四句「たなばたつめも」は、織女も、の意で、本巻の第二百二十五首の「たなばたつめに」と同じ語を用いている。次歌の第二百三十二首も四句に「たなばたつめは」を置いて受けている。
 結句「かくぞあるらし」の「らし」は根拠のある推量で、このようであるらしい、の意である。係助詞「ぞ」を受けるが、「らし」は連体形も終止形と同形である。

たなばたつめ:織女星、天の川のほとりで機を織る女
かへりごと:返事、返信
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
彦星のまれに逢ふ夜のとこ夏は 打ち払へども露けかりけり
次の歌
類なき物とは我ぞなりぬべき たなばたつめは人目やは守る