天の河瀬々の白波高けれど
ただ渡り来ぬ待つに苦しみ
- 歌の意味
-
天の川の瀬々の白波は高いけれども、ひたすら渡って来てしまった。待つことに苦しんで。
- 鑑賞
-
巻第五 秋歌上 243
詞書は前の歌に続き「七夕を詠める」
天の川の瀬ごとに白波は高いけれども、待つことの苦しさに耐えられず、ひたすら渡って来てしまったと詠んだ歌である。逢瀬を待ちかねて危険をも顧みない彦星の思いの強さを表している。
本巻の第二百三十九首から第二百四十七首までは、詞書「七夕を詠める」のもとに九首の七夕の歌が並び、天の川を隔てた織女と彦星の逢瀬をさまざまな面から詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「天の河」は、天の川、の意である。
二句「瀬々の白波」は、あちこちの瀬に立つ白波、の意で、渡るのを妨げる波を示す。
三句「高けれど」は、高いけれども、の意で、逆接の確定条件を表す。
四句「ただ渡り来ぬ」の「ぬ」は完了の助動詞で、ひたすら渡って来てしまった、の意である。ここで句切れとなる。本巻の第二百四十一首が「ただ渡りなん」と渡ろうとする願いを詠んだのに対し、本歌は渡り終えたことを詠んでいる。
結句「待つに苦しみ」は、待つことに苦しんで、の意で、四句と倒置の関係にあり、渡って来た理由を後から示している。
せぜ:あちこちの浅瀬
しらなみ:白く砕ける波
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
天の河流れて恋ふる七夕の 涙なるらし秋の白露
- 次の歌
-
秋来れば川霧わたる天の河 川上見つつ恋ふる日の多き