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天の河恋しき瀬にぞ渡りぬる
たぎつ涙に袖は濡れつつ

歌の意味
天の川の恋しい瀬を渡ってきたことだ。激しく流れる涙に袖は濡れながら。
鑑賞
巻第五 秋歌上 245

詞書は前の歌に続き「七夕を詠める」
 天の川の恋しい瀬を渡ってきたが、激しく流れる涙に袖は濡れ続けていると詠んだ歌である。逢瀬にたどり着くまでの恋しさのあまりの涙を、天の川の早瀬にたとえている。
 本巻の第二百三十九首から第二百四十七首までは、詞書「七夕を詠める」のもとに九首の七夕の歌が並び、天の川を隔てた織女と彦星の逢瀬をさまざまな面から詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「天の河」は、天の川、の意である。
 二句「恋しき瀬にぞ」の「瀬」は、川の浅瀬の意と、恋しい人に逢う折の意を重ねている。「ぞ」は係助詞である。
 三句「渡りぬる」は、渡ってきたことだ、の意で、二句の「ぞ」と連体形「ぬる」が係り結びをなす。ここで句切れとなる。前歌の第二百四十三首の「ただ渡り来ぬ」に続き、渡り終えたことを詠んでいる。
 四句「たぎつ涙に」の「たぎつ」は、水が激しく流れる、の意で、激しく流れる涙に、の意である。「瀬」「たぎつ」は「天の河」の縁語である。
 結句「袖は濡れつつ」は、袖は濡れながら、の意で、「つつ」は継続を表す。三句と倒置の関係にある。

たぎつ:水が激しく流れる、わき返る
せ:川の浅瀬、また、機会、折
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
秋来れば川霧わたる天の河 川上見つつ恋ふる日の多き
次の歌
織女の年とは言はじ天の河 雲立ちわたりいざ乱れなん