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風寒み鳴く秋虫の涙こそ
草葉色どる露と置くらめ

歌の意味
風が寒いので鳴く秋の虫の涙こそが、草葉を色づかせる露となって置いているのだろう。
鑑賞
巻第五 秋歌上 263

詞書「題しらず」
 風が寒いので鳴く秋の虫の涙こそが、草葉を色づかせる露となって置いているのだろうと見立てた歌である。草葉に置く露を虫の涙と見なし、その涙が草葉の色を変えるとして、秋の深まりを表している。
 虫の声を詠む歌が続いたのを受け、本歌は虫の涙を露に見立てている。本巻の第二百四十二首が織女の涙を白露に見立てたのと同じ趣向である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「風寒み」は、風が寒いので、の意で、いわゆるミ語法である。本巻の第二百六十一首の「野を寒み」に通じている。
 二句「鳴く秋虫の」は、鳴く秋の虫の、の意である。
 三句「涙こそ」の「こそ」は係助詞で、涙こそが、の意を強めている。
 四句「草葉色どる」は、草葉を色づかせる、の意で、本巻の第二百二十三首、第二百二十四首の「色どる風」が風を色づかせるものとしたのに対し、本歌は露を色づかせるものとしている。
 結句「露と置くらめ」の「らめ」は現在推量の助動詞「らむ」の已然形で、三句の「こそ」と係り結びをなす。露となって置いているのだろう、の意である。

あきむし:秋に鳴く虫
いろどる:色をつける、色づかせる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
秋来れば野もせに虫の織り乱る 声の綾をば誰か着るらん
次の歌
秋風の吹きしく松は山ながら 波立ち返る音ぞ聞こゆる