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秋の夜をいたづらにのみおき明かす
露はわが身の上にぞありける

歌の意味
秋の夜をただむなしく起きて明かす、その置き明かす露とは、わが身の上のことであったのだ。
鑑賞
巻第六 秋歌中 290

詞書「題しらず」
 秋の夜をただむなしく置き明かす露とは、起きて夜を明かすわが身のことであったと詠んだ歌である。眠れぬまま夜を明かす自分を、草葉に置いたまま夜を明かす露に重ねている。
 本巻の第二百九十首から第二百九十二首までは、夜を明かす身を露に重ねる歌が三首並んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「秋の夜を」は、秋の長い夜を、の意である。本巻の第二百九十二首は三句に、第二百九十六首は初句に「秋の夜を」を置き、眠れずに明かす秋の夜を詠んでいる。
 二句「いたづらにのみ」は、ただむなしく、の意である。
 三句「おき明かす」の「おき」は、露が「置く」意と、人が「起く」意を掛けた掛詞で、本巻の第二百八十三首の初句と同じ語である。
 四句「露はわが身の」は、露とはわが身の、の意で、露と自分を重ねている。
 結句「上にぞありける」の「上」は、身の上の意と、露の置く葉の上の意を重ねている。係助詞「ぞ」と連体形「ける」が係り結びをなし、わが身の上のことであったのだ、の意である。

おく:露が「置く」意と、人が「起く」意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
宿もせに植ゑなめつつぞ我は見る 招く尾花に人やとまると
次の歌
おほかたに置く白露も今よりは 心してこそ見るべかりけれ