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秋の夜をまどろまずのみ明かす身は
夢路とだにぞ頼まざりける

歌の意味
秋の夜を一睡もせずに明かしてばかりいる身は、夢の通い路で逢うことさえ、頼みにできないことだ。
鑑賞
巻第六 秋歌中 296

詞書「題しらず」
 秋の夜を少しも眠らずに明かしてばかりいる身には、夢の中で逢うことさえ頼みにできないと嘆いた歌である。現実に逢えないばかりか、眠れないために夢で逢うこともかなわない恋のつらさを表している。
 本巻の第二百九十首から続く、秋の夜を眠らずに明かす身の歌に通じている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「秋の夜を」は、秋の長い夜を、の意で、本巻の第二百九十首の初句、第二百九十二首の三句と同じ語である。
 二句「まどろまずのみ」は、少しも眠らずにばかり、の意である。
 三句「明かす身は」は、夜を明かす身は、の意である。
 四句「夢路とだにぞ」の「夢路」は、夢の中で恋しい人のもとへ通う道で、「だに」は、さえ、の意である。「ぞ」は係助詞である。
 結句「頼まざりける」は、頼みにできないことだ、の意で、四句の「ぞ」と連体形「ける」が係り結びをなしている。

まどろむ:うとうとと眠る
ゆめぢ:夢の中で恋しい人のもとへ通う道
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
秋の田のかりほの宿のにほふまで 咲ける秋萩見れど飽かぬかも
次の歌
時雨降り降りなば人に見せもあへず 散りなば惜しみ折れる秋萩