古典和歌stream

時雨降り降りなば人に見せもあへず
散りなば惜しみ折れる秋萩

歌の意味
時雨が降り、降ってしまったら、人に見せることもできずに散ってしまうだろう。散ったら惜しいと思って折った秋萩である。
鑑賞
巻第六 秋歌中 297

詞書「萩の花を折りて人につかはすとて」
 時雨が降ったら人に見せる間もなく散ってしまうだろうから、散ってしまっては惜しいと思って折った秋萩だと詠んだ歌である。花を散らす時雨を恐れ、盛りのうちに折って相手に届けようとする心を表している。
 詞書によれば、萩の花を折って人に送る時に詠んだものである。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「時雨降り」は、時雨が降り、の意で、晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりする雨を示す。
 二句「降りなば人に」の「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ば」は順接の仮定条件で、降ってしまったら、の意である。初句の「降り」を重ねている。
 三句「見せもあへず」の「あへず」は、しきれない、の意で、人に見せることもできずに、の意である。
 四句「散りなば惜しみ」は、散ってしまったら惜しいので、の意で、二句の「降りなば」と同じ形を重ねている。
 結句「折れる秋萩」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、折った秋萩、の意である。体言止めで、贈る花を示して結んでいる。

しぐれ:晩秋から初冬にかけて、降ったりやんだりする雨
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
秋の夜をまどろまずのみ明かす身は 夢路とだにぞ頼まざりける
次の歌
行き帰り折りてかざさむ朝な朝な 鹿立ちならす野辺の秋萩