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秋萩の色づく秋をいたづらに
あまた数へて老いぞしにける

歌の意味
秋萩が色づく秋を、むなしくいくつも数えて、年老いてしまったことだ。
鑑賞
巻第六 秋歌中 301

詞書「年の積もりにけることを、かれこれ申しけるついでに」
 秋萩が色づく秋を、何をなすこともなくいくつも数えて、年老いてしまったと嘆いた歌である。毎年めぐってくる萩の色づく秋を、過ぎた歳月を数える目印として、老いを嘆いている。
 詞書によれば、年をとってしまったことを人々があれこれ話していた折に詠んだものである。前歌までの萩の花を愛でる歌に続き、本歌は萩の秋を歳月の尺度として詠んでいる。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守などを務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。

 初句「秋萩の」は、秋萩が、の意で、前歌までの萩の歌を受けている。
 二句「色づく秋を」は、色づく秋を、の意で、萩の葉や花が色づく季節を示している。
 三句「いたづらに」は、むなしく、何もなさずに、の意である。本巻の第二百九十首の二句「いたづらにのみ」が一夜をむなしく明かすことを詠んだのに対し、本歌は歳月をむなしく重ねることを詠んでいる。
 四句「あまた数へて」は、いくつも数えて、の意で、過ぎた秋の数を示す。
 結句「老いぞしにける」は、年老いてしまったことだ、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「ける」が係り結びをなしている。本巻の第三百四十七首も、女郎花の盛りを見て老いを嘆いている。

としのつもり:年齢が重なること、積もった年月
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
白露の置かまく惜しき秋萩を 折りてはさらに我や隠さん
次の歌
秋の田のかりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露に濡れつつ