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秋の海に映れる月を立ち返り
波は洗へど色も変はらず

歌の意味
秋の海に映っている月を、繰り返し寄せ返して波は洗うけれども、月の色は少しも変わらない。
鑑賞
巻第六 秋歌中 322

詞書は前の歌に続き「秋歌とてよめる」
 秋の海に映る月を、波は繰り返し洗うけれども、月の色は少しも変わらないと詠んだ歌である。前歌の池に映る月に続き、海に映る月の変わらぬ清らかさを表している。
 前歌と並んで、水面に映る月を詠む歌が二首続いている。
 作者の「ふかやぶ」は清原深養父である。清原房則の子とされ、内匠允などを務めた。清少納言の曽祖父にあたり、琴の名手としても知られた。小倉百人一首には「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを」の歌が採られている。

 初句「秋の海に」は、秋の海に、の意で、字余りである。前歌の「秋の池の」に対し、海を詠んでいる。
 二句「映れる月を」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、映っている月を、の意である。
 三句「立ち返り」は、繰り返し、の意で、波が寄せては返すさまを重ねている。巻第五の第二百六十四首も「波立ち返る」と波を詠んでいる。
 四句「波は洗へど」の「ど」は逆接の確定条件で、波は洗うけれども、の意である。
 結句「色も変はらず」は、月の色も変わらない、の意である。本巻の第三百二十七首も結句に「色も変はらぬ」を置き、月の変わらない色を詠んでいる。

たちかへる:繰り返す、また波が寄せては返す
作者
清原深養父
出典
後撰和歌集
前の歌
秋の池の月の上に漕ぐ舟なれば 桂の枝に棹やさはらん
次の歌
秋の夜の月の光は清けれど 人の心の隈は照らさず