名にし負へばしひて頼まん女郎花
花の心の秋は憂くとも
- 歌の意味
-
女という名を持っているのだから、無理にでも頼りにしよう、女郎花よ。花の心が、秋には飽きてつらく変わろうとも。
- 鑑賞
-
巻第六 秋歌中 343
詞書「題しらず」
女という名を持っているのだから、たとえ花の心が秋には移ろってつらいものであっても、無理にでも頼りにしようと詠んだ歌である。女郎花の名の「女」に寄せ、移り気と知りながらなお頼みにする恋心を表している。
本巻の第三百四十二首、第三百四十三首は、紀貫之の女郎花の歌が二首並んでいる。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守などを務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「名にし負へば」の「し」は強意の副助詞、「負へば」は、名として持っているので、の意である。女郎花の名にある「女」を指している。
二句「しひて頼まん」の「しひて」は、無理に、強いて、の意で、「ん」は意志の助動詞「む」である。ここで句切れとなる。
三句「女郎花」は、女郎花よ、と呼びかけている。
四句「花の心の」は、花の心が、の意で、本巻の第二百七十六首の二句と同じ語である。第二百七十六首が花の心の移り気を詠んだのを受け、本歌はそれでも頼もうとしている。
結句「秋は憂くとも」の「とも」は逆接の仮定条件で、秋にはつらくても、の意である。「秋」には「飽き」の響きがあり、二句と倒置の関係にある。
なにしおふ:名として持つ、その名にふさわしい
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
白妙の衣かたしき女郎花 咲ける野辺にぞ今宵寝にける
- 次の歌
-
織女に似たるものかな女郎花 秋よりほかに逢ふ時もなし