おほかたの我が身ひとつの憂きからに
なべての世をも怨みつるかな
- 歌の意味
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おおよそは我が身ひとつのつらさのせいであるのに、世の中全体までも恨んでしまったことよ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 953
詞書は前の歌に続き「題しらず」
つらさはおおよそ我が身ひとつのものであるのに、世の中全体までも恨んでしまった、と詠む歌である。恋の苦しみから世のすべてを恨んでいた自分を省み、そのつらさが結局は自分ひとりのものだと気づく心を詠んでいる。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の一人として仮名序を書き、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「おほかたの」は、おおよそは、たいていは、の意である。
二句「我が身ひとつの」は、我が身ひとりの、の意である。本巻の第九百九十九首の四句「我が身ひとつに」と同じ語を共有し、また第九百八十首の結句「心ひとつに」とも通じている。
三句「憂きからに」は、つらさのせいで、の意で、「からに」は原因を表す。本巻の第九百四十五首の初句「身の憂きを」と、つらさを我が身のものと見る点が通じている。
四句「なべての世をも」は、世の中全体までも、の意である。二句の「我が身ひとつ」と、四句の「なべての世」とを対比し、我が身と世という別の尺度を並べている。
結句「怨みつるかな」は、恨んでしまったことよ、の意で、「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「かな」は詠嘆を表す。本巻の第九百七十三首の結句「怨みつるかな」と同じ句である。
おほかた:大方。おおよそ、たいてい
よ:世。世の中、また男女の仲
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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逢ふことのなげきの本を尋ぬれば 独り寝よりぞ生ひはじめける
- 次の歌
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あらち男の狩る矢の先に立つ鹿も いと我ばかり物は思はじ