あらち男の狩る矢の先に立つ鹿も
いと我ばかり物は思はじ
- 歌の意味
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勇猛な狩人の射る矢の先に立つ鹿でさえ、私ほどひどく物思いはしないだろう。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 954
詞書は前の歌に続き「題しらず」
勇猛な狩人が狩りに射る矢の先に立つ鹿でさえ、私ほどひどく物思いはしないだろう、と詠む歌である。命の危険にさらされた鹿の恐れと比べてもなお、自分の恋の苦しみの方がまさっていると、思いの深さを強く訴えている。
作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
初句「あらち男の」は、勇猛な男の、の意で、ここでは狩人をいう。
二句「狩る矢の先に」は、狩りに射る矢の先に、の意である。
三句「立つ鹿も」は、立っている鹿も、の意で、「も」は、さえ、の意である。
四句「いと我ばかり」は、たいそう私ほどには、の意である。本巻の第九百九十五首の初句「我ばかり」と、同じ語を共有している。
結句「物は思はじ」は、物思いはしないだろう、の意で、「じ」は打消の推量を表す。次歌の第九百五十五首の四句「我は思はじ」と、「思はじ」の語を共有している。
あらちを:荒ち男。勇猛な男、ここでは狩人
かる:狩る。獣をとらえる、狩りをする
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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おほかたの我が身ひとつの憂きからに なべての世をも怨みつるかな
- 次の歌
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荒磯の外行く波の外心 我は思はじ恋ひは死ぬとも