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荒磯の外行く波の外心
我は思はじ恋ひは死ぬとも

歌の意味
荒磯の外を寄せては去っていく波のような、ほかへ移ろう心を私は持つまい。たとえ恋い死にしようとも。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 955

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 荒磯の外を去っていく波のような浮気心を私は持つまい、たとえ恋い死にしようとも、と詠む歌である。ほかの人へ心を移すことは決してしないという、命をかけた一途な誓いを詠んでいる。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。飛鳥時代の宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人として歌聖と仰がれ、三十六歌仙に数えられる。拾遺和歌集には、万葉集の歌が人麻呂の作として多く収められている。
 万葉集巻十一に、初句を「荒磯越し」、結句を「恋ひて死ぬとも」とする類歌が収められている。

 初句「荒磯の」は、波の荒い磯の、の意である。
 二句「外行く波の」は、外の方へ去っていく波の、の意である。上の二句は、同じ「外」の語を重ねて三句の「外心」を導く序詞である。
 三句「外心」は、ほかの人へ移る心、浮気心、の意である。
 四句「我は思はじ」は、私は持つまい、の意で、「じ」は打消の意志を表す。ここで句切れとなる。前歌の第九百五十四首の結句「物は思はじ」と、「思はじ」の語を共有している。
 結句「恋ひは死ぬとも」は、たとえ恋い死にしようとも、の意で、四句の誓いの強さを倒置によって添えている。本巻の第九百三十五首から第九百三十七首までの恋死の歌と、恋に死ぬことを詠む点が通じている。

あらいそ:荒磯。波の荒い磯
ほかごころ:外心。ほかの人に移る心、浮気心
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
あらち男の狩る矢の先に立つ鹿も いと我ばかり物は思はじ
次の歌
かき曇り雨降る川のささら波 間なくも人の恋ひらるるかな