忘らるる時しなければ春の田を
かへすがへすぞ人は恋しき
- 歌の意味
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忘れられる時などないので、春の田を何度も耕し返すように、くり返しくり返しあの人が恋しい。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 811
詞書「延喜十五年御屏風歌」
忘れられる時がないので、春の田を耕し返すように、くり返しあの人が恋しいと詠む歌である。詞書から、延喜十五年(915)の屏風に添えて詠まれた歌とわかる。屏風に描かれた春の田を耕す景を取り込み、絶えず繰り返される恋しさを詠んでいる。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「忘らるる」は、忘れることができる、の意で、「るる」は可能の助動詞「る」の連体形である。
二句「時しなければ」は、時がないので、の意で、「し」は強意の副助詞である。
三句「春の田を」は、春の田を、の意で、田を耕し返すことから「かへす」を導いている。次歌の第八百十二首の二句「春の荒田を」と、春の田を共有している。
四句「かへすがへすぞ」は、田を耕して土を「返す」と、くり返しくり返しの意の「返す返す」を掛ける掛詞である。次歌の第八百十二首の三句「うちかへし」と、「返す」の語を共有している。
結句「人は恋しき」は、あの人が恋しい、の意で、係助詞「ぞ」を受けて「恋しき」と連体形で結んでいる。次歌の結句「人ぞ恋しき」と、ほぼ同じ結びである。
かへすがへす:田の土を「返す」意と、くり返しくり返しの意を掛ける
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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いにしへをいかでかとのみ思ふ身に 今宵の夢を春になさばや
- 次の歌
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梓弓春の荒田をうちかへし 思ひやみにし人ぞ恋しき