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秋の野に夜もや寝なん女郎花
花の名をのみ思ひかけつつ

歌の意味
秋の野に夜も寝てしまおうか。女郎花の、女という花の名ばかりを心にかけながら。
鑑賞
巻第六 秋歌中 345

詞書「題しらず」
 女郎花の「女」という花の名ばかりを心にかけて、秋の野に夜も寝てしまおうかと詠んだ歌である。花の名に心ひかれるあまり、野に一夜を明かそうという戯れの心を表している。
 本巻の第三百四十二首の紀貫之の歌も、女郎花の咲く野辺で寝たことを詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「秋の野に」は、秋の野に、の意である。
 二句「夜もや寝なん」の「や」は疑問の係助詞、「なん」は強意と意志で、連体形で係り結びをなす。夜も寝てしまおうか、の意で、ここで句切れとなる。
 三句「女郎花」は、女郎花の、の意で、次の「花の名」へ続いている。
 四句「花の名をのみ」は、花の名ばかりを、の意で、女郎花の名にある「女」を指す。本巻の第三百四十八首も「花の名ならぬ」と、女郎花の名を詠んでいる。
 結句「思ひかけつつ」の「つつ」は継続を表し、心にかけながら、の意である。

おもひかく:心にかける、思いを寄せる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
織女に似たるものかな女郎花 秋よりほかに逢ふ時もなし
次の歌
女郎花色にもあるかな松虫を もとに宿して誰を待つらん