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秋風に雲飛びわけて来る雁の
千世に変はらぬ声聞こゆなり

歌の意味
秋風の中、雲を飛び分けてやって来る雁の、千年たっても変わらない声が聞こえてくる。
鑑賞
巻第七 秋歌下 357

詞書「題しらず」
 秋風の中を、雲を飛び分けてやって来る雁の、千年たっても変わらない声が聞こえてくると詠んだ歌である。毎年変わらずに渡ってくる雁の声に、永遠に続く秋の営みをたたえている。
 前歌が雁に遠い人の便りを期待したのに対し、本歌は雁の声そのものの変わらなさを詠んでいる。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守などを務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
 なお本文の二句は「雲飛びわけて」とあり、読み仮名の行の「きりとひわけて」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「秋風に」は、秋風の中に、の意で、本巻の第三百五十五首と同じ初句である。
 二句「雲飛びわけて」は、雲を飛び分けて、の意で、空高く雲を押し分けて飛ぶ雁の勢いを表している。
 三句「来る雁の」は、やって来る雁の、の意である。
 四句「千世に変はらぬ」は、千年たっても変わらない、の意である。
 結句「声聞こゆなり」の「なり」は音や声によって推定する助動詞で、声が聞こえてくる、の意である。前歌の三句「渡るなり」と同じく、声によって雁の渡りを知っている。

とびわく:飛びながら押し分ける
ちよ:千年、きわめて長い年月
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
秋の夜に雁かも鳴きて渡るなり わが思ふ人の言づてやせし
次の歌
物思ふと月日のゆくも知らざりつ 雁こそ鳴きて秋と告げつれ